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2017年5月8日月曜日

ルパンシリーズをほうふつとさせる行き当たりばったりの展開:『業火』パトリシア・コーンウェル(1998年)|今日のミステリー


『業火』パトリシア・コーンウェル(1998年)である。1998年。これも悪くない。パトリシア・コーンウェルは90年代のものはそれなりにいいようだ。

とは言っても、やはりパトリシア・コーンウェルなので作品に隙が多く、アラがわかりやすく見えている。

今回のアラ。スカーペッタの彼氏のFBIが犯人に焼き殺されてしまうのである。それで、2003年の『黒蠅』の巻で、実はそれは偽装で、焼き殺されたのは別人で本当は生きていた、とわかる。理由はFBIの保護プログラムで、彼氏が『2000年代に入ってからの巻に出てくる別の連続殺人鬼の金持ち一家』に命を狙われていたため……である。

パトリシア・コーンウェルの雑なのはここからで、つまり彼氏は、この1998年の『業火』の時点で、金持ち連続殺人鬼を捜査していて命を狙われているはずなのだが、作品中になんら、それを匂わせる記述がない。

また、さらに 『黒蠅』では、スカーペッタの姪と親友だけは、保護プログラムのための偽装殺人であることを知っていた、と書いてあるが、『業火』中にはそれを匂わせる記述が、もちろんどこにもない。ついでに言うと、保護プログラムだと知っている友人たちと何年も過ごしていて(他の事件捜査をしたりして)、まったくバレないのいうのは、設定が不自然すぎる。

もしかして、この時点では『2000年代に入ってからの巻に出てくる別の連続殺人鬼の金持ち一家』のアイデアはまったくなかったのではないか。

ただ、この時点で、犯人に焼き殺されてしまった、という展開はさすがに単純すぎるので、パトリシア・コーンウェルも保護プログラムのための偽装殺人というのは考えていたと思う。

俺の推測では、この巻の殺人鬼を捕まえるために、一度死んだことにして姿を消した、という展開にするつもりだったのではないか。しかし、これを後になってから、実は別の殺人鬼の捜査のためだった、ということに変えたのではないか。あまりにも伏線がなさすぎるので。

しかし、そこはパトリシア・コーンウェルなので、行き当たりばったりで、一度は殺したけど、やっぱり生きていたことにしようかしら?と、やった疑いも拭いきれない。

三世ではないほうのアルセーヌ・ルパン シリーズの時代の大衆小説のように、絶対絶命の窮地に陥ったが『実は脱出のために気球を隠してあったのじゃ、わっははは!』とプカプカと逃げるような感じで、行き当たりばったりで書いてるのではないか。

そして、恐ろしいことにこの時点では単純に焼き殺されていて、あとで思いつきで生き返らせた、としたほうが、小説内の記述ときれいにあっているのである。これはどうしたことか。

などと、いろいろ考えてるのだが、どうなのだろうか。 パトリシア・コーンウェルさんが読んでいたら、返答をもらいたい。

あと、2000年代になってからの巻で、パトリシア・コーンウェルはスカーペッタたちを、なんの説明もなく20歳くらい若返らせている。訳者が作者に問い合わせをしたそうだが、これにはさすがに驚いた。

小説内の時間だと、登場人物がみんな70過ぎて、引退しないとならないので、若くしたそうだ。 ま、こういう人なんだな。さすがのパトリシア・コーンウェルらしい荒さである。このエピソードひとつでどういう作風かわかるであろう。

今回は火災にまつわるミステリーということで、いつもと展開が違っていておもしろい。火事による高温の炎上の考証などはよくできている。サラ・パレツキーにも火災がテーマの巻があったし、『火災ミステリー』というひとつのジャンルがあるのかもしれない。


内容紹介
電話はマリーノからだった。昨晩、農場で火災があり、何万ドルもする馬が20頭焼け死んだという。バスルームで発見された身元不明の死体の顔には、無数の傷が。自殺か、事故か、放火か?それはスカーペッタを襲う身も凍る惨劇の前触れだった。事件の背後にちらつく脱走犯キャリーの影。検屍官シリーズ最大の危機! 〈検屍官シリーズ〉第9弾。(講談社文庫)
内容(「BOOK」データベースより)

【パトリシア・コーンウェル】
マイアミ生まれ。警察記者、検屍局のコンピューター・アナリストを経て、1990年『検屍官』でデビュー。MWA・CWA最優秀処女長編賞を受賞して、一躍人気作家に。バージニア州検屍局長ケイ・スカーペッタが主人公の検屍官シリーズはDNA鑑定、コンピューター犯罪など時代の最先端の素材を扱い読者を魅了、’90年代ミステリー界最大のベストセラーとなる。
【相原真理子】
東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。レスラー『FBI心理分析官』(早川書房)、カリール『外科医』(平凡社)、チャールズ『死の誘い』(創元推理文庫)、コーンウェル『検屍官』『証拠死体』『真犯人』『私刑』『接触』『スズメバチの巣』(以上、講談社文庫)など、翻訳書多数。





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